【空き家問題】空き家相続を受けたら?空き家の閉じ方・お役立ち制度

空き家を放置することにより起きるトラブル

「空き家の放置は問題ないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、空き家はさまざまなトラブルを引き起こす原因となっていることをご存知でしょうか?

老朽化による建物の倒壊

日本の戸建て住宅は木造が多いです。定期的に換気をしたりするような管理をしないと、劣化が早まります。
放置期間が長引いた場合、どんどん老朽化が進み地震や台風などの自然災害で倒壊してしまうことも。その場合、通行人などに被害が及ぶような事故も起こりかねません。

また、建物の外壁の落書きが放置されたり、周囲の雑草が生い茂っているなど、ひと目で空き家だと分かるような状態になっていることで、不法侵入や不法投棄、放火といった犯罪リスクが上昇します。
そのエリアに住むほかの住民にとっては、それだけでも不安ですが、その結果、エリアの資産価値まで下がってしまう可能性もあるわけです。
すなわち、空き家の放置というのは自分だけの問題にとどまらず、近隣への悪影響をも招くことにつながります。

また、空き家問題と聞くと、過疎化の進む地方だけの話だと思う人もいるかもしれません。
確かに、都市部の空き家率は地方に比べれば低くなっていますが、実は都市部の方が空き家の数自体は多く、なおかつ住宅が密集していることから、空き家が周囲に与える悪影響の度合いは、地方より高くなることもあるのです。

法整備による対策が!改善が必要な状態とは?

1990年代後半、人口・世帯の減少が他の地域と比較して始まった地域(地方)において、空き家は急速に増加しました。
そんな地方の各自治体で、独自の条例を制定するといった対策が取られてきました。

その後、空き家が都市部でも増加していき、2015年5月「空家等対策の推進に関する特別措置法」が全面施行されました。

この「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって、

  • 保安面で危険な状態
  • 衛生面で有害となる状態
  • 著しく周囲の景観を損なっている状態
  • 生活環境の保全という点で現状が不適切である状態

このような空き家は「特定空家等」に認定されることになりました。
該当の空き家の所有者に対し、市区町村は段階に則って改善を促します。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」措置の流れ

1)調査と「助言」

まずは、「行政の関与が必要」となった空き家について、所有者の確認・立入調査などが行われます。
その結果、「特定空家等」に該当すると判断された場合、市区町村から空き家の所有者に対して、改善を促す「助言」が行われます。

2)助言よりも強い「指導」

「助言」に従わなかったり、直ちに改善が必要だったりした場合、助言よりもさらに強く適正管理を促すための「指導」が行われます。

3)指導よりも強い「勧告」

それでも状況が改善されない場合は、さらに強い「勧告」が行われます。
「勧告」が行われると、「住宅用地の軽減措置の特例」が適用されなくなり、固定資産税や都市計画税の優遇から除外となり、更地と同じように課税されることになります。

4)勧告よりも強い「命令」

「勧告」を受けても所有者が対応しないと、最後の「命令」が出ます。
「命令」は行政からの最も厳しい通告で、まずは一刻も早い対応必要です。
命令に従わなかった場合、最大50万円の過料が料される可能性もあります。

4)強制的に対策をされてしまう「行政代行執行」

「命令」を受けたうえで改善が見られない場合には、「行政代執行」が行われます。
「行政代執行」とは、空き家の所有者の許可が不要、行政が”強制的”に必要な対策(解体等)を行うことができます。
さらに、その際にかかった費用はすべて所有者に請求されます。費用を支払わない場合は、資産が差押えられてしまいます。

家を相続したらどうする?知っておくべき5つの対応

では実際に親や家族が亡くなるなどして家を相続した場合は、どう対策をすればよいのでしょうか。
主な方法としては以下5つになります。

  1. 自己利用
  2. 適正管理
  3. 売却
  4. 賃貸
  5. それ以外への利活用

ベストは「自己利用」

相続した家をリフォームするなどし、相続を受けた人やその家族が住むこと(①自己利用)が可能であればそれがベストです。
また、近隣に住んでいる、適切な管理ができる(②適正管理)といった場合は、自己利用はできなかったとしてもしばらく現状維持としておくことが可能ですね。
※ただし、空き家の管理にはお金と手間がかかります
※なるべく早めに、その後の対応を考える必要があります

そのほか、③売却して現金化する、④賃貸に出し賃貸収入を得る、あるいは、元の住宅としての形ではなく、リフォームなどをして店舗・オフィス・工房・コミュニティスペースなどとして利活用、駐車場にしたりするという方法(⑤それ以外への利活用)などもあります。

困ったら相談してみよう。 市区町村の制度(空き家バンクなど)

売却や賃貸を検討しても、様々な事情でスムーズに買い手・売り手が見つからないこともあります。
そのような時、家がある地域の市区町村に相談してみる、ということもおすすめです。
市区町村によって実施している空き家対策制度はさまざまですが、その中の一つに「空き家バンク」という制度があります。

空き家バンクとは?

空き家バンクとは、市区町村の空き家対策制度です。
住民から空き家を募って、空き家の利用を希望する人に物件情報を提供するという、いわゆる仲介のような仕組みです。

空き家バンクの物件情報の掲載は各市区町村のWEB サイト上で行われています。
2018年4月から、公募で選定された事業者によって運営されている「全国版空き家・空き地バンク」のWEB サイトも開設されています。

全国の「空き家バンク」の情報をそのサイトで一括確認することができるようになっており、利用促進のために、成約をすると奨励金を支払う、という市区町村も存在します。

住宅セーフティネットとは?

また空き家を賃貸に出したい場合、「住宅セーフティネット制度」というものも活用するとよいでしょう。

住宅セーフティネット制度とは、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯など、住宅確保が困難な人々(住宅確保要配慮者…以下より要配慮者と表現します)に安全な住宅を提供する為の制度として2017年10月にスタートした制度です。

貸し出しをするオーナーは、入居を受け入れることとする要配慮者の範囲などを記載した申請書を提出します。
そして都道府県知事から、「住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅」としての登録を受けます。
要配慮者はその登録情報を見て入居を申し込む、という流れです。

賃借人の受入れにあたって必要だと判断される改修を行う場合には、改修工事費の補助を受けることもできるのです。

制度の登録条件には注意を

これらの「空き家バンク」や「住宅セーフティネット制度」などへ登録には条件があり、全ての物件が掲載できるというわけではありません。
またこれはもちろんのことですが、掲載できた=必ず売却できる、賃貸に出せるという保証はありません。

制度の利用が難しい、売却できない・賃貸に出せないという場合は、売却価格が安くなってしまうというデメリットはありますが、どのような物件でも掲載できる格安仲介サイトなどに登録して引取り手を探すという選択肢も、改修や再販をする買取再販業者に買い取ってもらうという選択肢もあります。

空き家への対応についての考え方

空き家を相続された方にとって、思いがこもっていたり、愛着のある家を低価格で手放すことに抵抗を覚えるという人もいるでしょう。
しかし、仮に家が崩れ落ちてしまい通行人が大ケガをした場合には、莫大な賠償金が発生するリスクもあります。

また、時間を置いたとしても値段が上がる土地は一部です。
さらに経年劣化が進んだ建物の価値はどんどん下がっていきます。
一般的、そして現実的な考え方をするならば、早期対策を検討することが得策でしょう。

空き家解体のための助成金

買い手・借り手が見つからない空き家があるのならば、解体して更地にしてしまうことも検討してみましょう。

その場合、空き家解体にも当然費用がかかります。
建物の立地、規模、構造によって費用は変動しますが、あくまで目安として木造1坪4万円、鉄筋コンクリート造1坪7万円などと費用がかかります。

そこで最近では、空き家の解体に助成金を出す自治体も徐々に増えています。

東京都足立区では一定の要件を満たした空き家に対して、解体工事費用の2分の1が助成されます(木造で上限50万円、非木造で上限100万円)。

ただし、助成金制度のある自治体はまだ少数です。
内容も自治体ごとに大きく異なるため、まずは、地域の自治体に相談しましょう。
結果助成金が活用できなくても、有無や内容は知っておくべきです。

遺品整理を放置していませんか?業者への依頼も選択肢へ

そもそも、空き家に残っている家財の整理・形見分けなどを含めた遺産の分配も必要となります。

遺品となる家財を整理する場合、まず種類ごとに分類することが重要です。
具体的には、「ごみ」「リサイクルショップなどへの売却用」「遺産相続に関係するもの」「思い出の品」などに分類する必要があります。

時間や労力がある場合、遺品整理は自分たちで行うことができます。
ただ、家財が大量にある、思い入れのある物を自分で処分するのが難しい、時間がない、居住地から遠い、という場合は遺品整理業者に依頼することも選択肢として考えるべきでしょう。