相続不動産売却の費用・税金がまるわかり!手続きの流れも解説

1. はじめに:相続不動産売却は複雑…でも、この記事を読めば大丈夫!

相続で不動産を取得したものの、売却しようか迷っていませんか? 相続不動産の売却は、手続きが複雑で、費用や税金についても分かりづらいものです。

手続き税金その他
相続人の確定相続税売却時期
遺産分割協議譲渡所得税共有者の有無

上記のように、考慮すべき項目は多岐に渡ります。

しかし、事前に必要な知識を身につけておけば、手続きは決して難しいものではありません。 この記事では、相続不動産売却の流れから費用、税金、注意すべき点まで、分かりやすく解説していきます。 この記事を最後まで読めば、相続不動産売却に関する不安を解消できます。 ぜひ、最後までお読みいただき、安心して手続きを進めていきましょう。

2. 相続不動産売却の流れ

2-1. 相続の手続き (相続人確定、遺産分割協議など)

相続不動産を売却するには、まず誰に所有権があるのかを確定させる必要があります。

これは、以下の2つの段階を踏んで行います。

手続き内容必要書類例
① 相続人の確定民法で定められた基準に従い、誰が相続人になるのかを確定します。戸籍謄本、住民票など
② 遺産分割協議相続人間で、誰がどの財産を相続するかを話し合いで決めます。遺産分割協議書など

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
この遺産分割協議書によって、相続不動産の所有者が正式に決まります。

なお、相続人が複数いる場合は、全員の同意が得られないと売却できません。後々のトラブルを避けるためにも、誰が相続するか、誰が不動産を相続するのかは、しっかりと話し合って決めるようにしましょう。

2-2. 不動産の評価

相続した不動産を売却するには、まず不動産の評価額を把握することが重要です。なぜなら、この評価額が、後々の税額計算の基礎となるからです。

不動産の評価方法はいくつかありますが、一般的に用いられるのは以下の3つです。

評価方法説明
固定資産税評価額市区町村が税金の査定のために算出する価格です。
相続税路線価国税庁が公表している路線価に基づいて算出する価格です。主に土地の評価に用いられます。
不動産鑑定士による鑑定評価不動産鑑定士が、現地調査などを経て、客観的な評価額を算出します。

相続税路線価や不動産鑑定士による鑑定評価は、固定資産税評価額と比較して、より実勢価格に近い価格となる傾向があります。

どの評価方法を採用するかは、ケースバイケースです。不動産の種類や状態、売却を急いでいるかなど、様々な要素を考慮して決定します。

2-3. 売却方法の決定 (仲介、買取など)

相続した不動産を売却するには、いくつかの方法があります。主な方法は以下の通りです。

売却方法説明メリットデメリット
仲介不動産会社に仲介を依頼し、購入希望者を探してもらう方法購入希望者が見つかれば、高値で売却できる可能性が高い売却までに時間がかかる場合がある
買取不動産会社に直接買い取ってもらう方法売却が早く、現金化しやすい仲介に比べて売却価格が低くなる傾向がある

それぞれのメリット・デメリットを比較し、ご自身の状況や希望に合った方法を選びましょう。

  • 時間に余裕があり、少しでも高く売りたい場合は「仲介」
  • すぐに現金化したい場合や、売却の手間を省きたい場合は「買取」

がおすすめです。

2-4. 売買契約、引き渡し

売却先が決まったら、不動産会社を通して売買契約を結びます。
売買契約書には、以下のような内容が記載されます。

項目内容
売主・買主氏名、住所、生年月日、連絡先など
物件情報所在地、面積、構造など
売買価格金額
手付金金額、支払日
残代金の支払い金額、支払日、支払方法
引き渡し日日時、引き渡し場所
違約金契約違反があった場合の違約金の金額や条件
その他特約事項など

売買契約書は重要な書類なので、内容をよく確認してから署名・捺印しましょう。
その後、残代金の支払いを行い、物件の所有権が買主に移転します。
同時に、固定資産税などの清算を行い、物件を引き渡します。

3. 相続不動産売却にかかる費用

3-1. 税金以外にかかる費用 (仲介手数料、印紙税など)

相続税とは別に、売却時にかかる費用があります。 主なものは以下のとおりです。

費用項目内容目安(売却価格1億円の場合)
仲介手数料売買契約が成立した場合に不動産会社に支払う手数料約300万円 + 6万円 × 消費税
印紙税売買契約書に貼付する印紙代10万円
登記費用名義変更や抵当権抹消などの手続きにかかる費用20万円~
測量費用土地の境界が不明確な場合に境界を確定するための費用50万円~
建物解体費用売却前に建物を解体する場合にかかる費用100万円~
ハウスクリーニング費用売却前に室内を清掃する場合にかかる費用10万円~
広告宣伝費より有利な条件で売却するために、不動産会社が広告宣伝活動を行う際に発生する費用要相談

これらの費用は売却価格や不動産会社、建物の状態によって異なります。 事前に見積もりを取ることが大切です。

3-2. 税金 (相続税、譲渡所得税)

相続不動産を売却すると、売却益に応じて税金が発生します。主な税金は以下の2つです。

税金の種類課税の対象計算方法(目安)
相続税相続で取得した財産の総額
譲渡所得税不動産を売却して得た利益(売却価格 – 取得費 – 譲渡費用)× 税率

相続税は、相続した人が支払う税金です。遺産の総額に応じて税率が決まります。相続不動産を売却しなくても、相続時に評価額に基づいて相続税が計算されます。

譲渡所得税は、不動産を売却して利益が出た場合にその利益に対してかかる税金です。売却益は、「売却価格」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて計算します。 取得費には、購入時の価格や手数料、その後の増改築費用などが含まれます。譲渡費用には、仲介手数料や印紙税などが含まれます。

なお、相続してから3年以内に売却する場合には、相続税の計算上、特例が受けられる場合があります。詳しくは、税理士などの専門家にご相談ください。

4. 相続不動産売却で使える特例控除

4-1. 取得費加算の特例

相続した不動産を売却する際には、取得費が大きく関わってきます。取得費とは、不動産を取得するためにかかった費用のことで、売却時の利益(譲渡所得)を計算する際に控除できます。この取得費が大きければ大きいほど、利益は減り、税金も安くなる仕組みです。

相続不動産の取得費は、原則として「相続税評価額 × 取得費加算の割合」で計算します。この取得費加算の特例は、相続税の申告期限から3年以内に売却する場合に適用できます。

取得した時期取得費加算の割合
平成28年4月1日以前に取得10%
平成28年4月2日以降に取得3%

例えば、平成29年に相続した不動産を令和5年に売却する場合、取得費加算の割合は3%となります。この特例を活用することで、売却時の税負担を軽減できる可能性があります。

4-2. 居住用財産の3,000万円特別控除

相続した不動産を売却する際、一定の条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる特例があります。これを「居住用財産の3,000万円特別控除」といいます。

控除額適用条件
最大3,000万円* 相続開始直前まで被相続人が住んでいた家屋であること
* 相続人が相続開始から売却するまで住まなかったこと
* 売却する年の12月31日までに売却すること

この特例を利用できれば、相続不動産の売却によって発生する税金が大幅に軽減される可能性があります。ただし、適用条件が厳格なので注意が必要です。例えば、相続した後に一定期間でも相続人が住んでしまうと、この特例は適用されません。

ご自身のケースに当てはまるかどうか、不安な場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

4-3. 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続した家が空き家の場合、売却時に使える特例があります。

相続開始時点で被相続人の居住用財産であった空き家を、相続人が売却する場合に適用される特例です。

この特例を使うことで、譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。

要件内容
被相続人の居住用財産であること相続開始時に、被相続人が住んでいた家であること。
相続人が売却すること相続人が、相続した家を売却すること。
家屋であること土地ではなく、建物が対象です。
耐震性がないこと耐震基準を満たしていないこと。ただし、耐震リフォーム等を行った場合は対象外です。
特定の親族が所有・居住していないこと特定の親族が相続開始日から売却するまでの間、所有または居住していないこと。

適用条件を満たせば、相続税の負担を軽減できます。

空き家になってしまった実家の売却を検討している方は、この特例について確認しておきましょう。

5. 注意点

5-1. 共有者の同意

相続不動産を売却する際には、共有者全員の同意が必要不可欠です。

相続によって不動産が複数人で共有になるケースは少なくありません。

ケース内容
兄弟姉妹で相続親が亡くなり、子が複数いる場合
代襲相続本来相続するはずだった子がすでに亡くなっており、その孫が相続人になる場合

もし、共有者の中に売却に反対する人がいる場合、売却を進めることができません。

共有者全員が納得のいく着地点を見つけるためには、下記のような方法が考えられます。

  • 話し合い: なぜ売却したいのか、売却しない場合はどのようにするのかなど、それぞれの考えを共有することが重要です。
  • 第三者機関の活用: 弁護士や不動産コンサルタントなどに間に入ってもらい、客観的な意見を聞くのも有効です。

共有者間の合意形成は、スムーズな不動産売却において非常に重要です。

5-2. 売却時期と税金

相続不動産を売却するタイミングは、税金の負担額に大きく影響します。そのため、売却時期は慎重に検討する必要があります。

タイミングメリットデメリット
相続後すぐ・相続税の納税資金を確保しやすい
・売却益が出にくい場合は、譲渡所得税が軽減される可能性がある
・不動産の評価額が確定していない段階での売却となるため、後々損をする可能性がある
相続後しばらく経過してから・不動産の評価額が確定しているため、損得を判断しやすい
・譲渡所得税の軽減措置を受けられる可能性がある
・相続税の納税期限が迫っている場合は、売却が間に合わない可能性がある
・不動産を保有している間の固定資産税などの負担が発生する

上記はあくまで一般的な例であり、個々のケースによって最適な売却時期は異なります。 売却を検討し始めたら、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

5-3. 専門家への相談

相続不動産の売却は、不動産売買と相続に関する知識が必要となる複雑な手続きです。

専門家相談内容例
税理士相続税の申告、特例控除の活用、税務上の有利な売却時期の相談
司法書士相続登記、遺産分割協議書の作成サポート
不動産会社不動産の査定、売却方法の提案、売買契約手続きの代行

上記以外にも、弁護士に法律相談をする、相続問題に強いファイナンシャルプランナーに相談するなど、状況に応じて適切な専門家に相談することで、手続きをスムーズに進めることができます。

専門家への相談は、必ずしも費用がかかるわけではありません。まずは無料相談などを活用し、疑問点を解消することをおすすめします。

6. まとめ:相続不動産売却は計画的に!

相続不動産の売却は、想像以上に複雑で時間のかかる手続きです。

手続き費用・税金注意点
相続手続き登録免許税など相続人全員の同意
不動産の評価不動産鑑定評価費用評価額で税金が変わる
売却活動仲介手数料など売却方法によって費用が異なる

また、売却時期によって税金が変わることがあります。

さらに、相続不動産には共有の問題や、予想外のトラブルが発生する可能性もあります。

そのため、相続不動産の売却を検討する際は、早めから専門家へ相談し、計画的に進めることが大切です。