不動産売却で消費税はかかる?計算方法や節税対策をケース別に解説!

1. 不動産売却と消費税の基本

不動産売却で消費税はかかる?

不動産を売却するとき、「消費税」は必ずかかるのでしょうか?

答えは、「場合による」です。

個人が住んでいる家など、不動産の種類や売主の状況によって、消費税がかかる場合とかからない場合があります。

売主消費税
個人原則として非課税
ただし、一定の要件を満たす場合は課税対象になることも
法人(課税事業者)原則として課税

次の章から、消費税がかかるケース・かからないケースを具体的に解説していきます。

消費税がかかるケース・かからないケース

不動産売却において、消費税は必ず発生するわけではありません。消費税がかかるかどうかは、売主が個人か法人か、売却する不動産の種類や、売主が不動産の売買を事業として行っているかなど、いくつかの要素によって判断されます。

ケース説明
個人で居住用の不動産を売却する場合原則として消費税はかかりません。
法人で事業用の不動産を売却する場合原則として消費税がかかります。
個人が事業用の不動産を売却する場合原則として消費税がかかります。
個人が居住用として使用していた不動産を売却する場合でも、一定の要件を満たすと事業用とみなされ、消費税がかかる場合があります。例えば、マンションの一室を賃貸していた場合や、自宅の一部を事務所として使用していた場合などです。

このように、不動産売却における消費税の扱いは複雑です。具体的なケースについては、税理士などの専門家にご相談いただくことをおすすめします。

個人と法人、それぞれのケース

不動産売却における消費税は、売主が個人か法人かによって、その取り扱いが異なります。

売主課税事業者である場合課税事業者でない場合
個人原則として消費税の納税義務があります。ただし、一定の要件を満たす場合は免税となる場合があります。原則として消費税の納税義務はありません。(非課税取引)
法人原則として消費税の納税義務があります。原則として消費税の納税義務があります。

個人が不動産を売却する場合、売主が消費税の課税事業者であるかどうかで、消費税の取り扱いが変わります。 例えば、個人が自ら居住する家屋を売却する場合、通常は課税事業者には該当しないため、消費税はかかりません。 一方、法人が不動産を売却する場合は、売主が課税事業者であるため、原則として消費税の納税義務が発生します。

詳細な要件や条件については、後述する章で詳しく解説します。

2. 消費税がかかる不動産売却

課税対象となる不動産の種類

– 建物

消費税の課税対象となる「建物」とは、土地の上に定着している建造物を指します。 具体的には、次のようなものが挙げられます。

用途
居住用一戸建て住宅、マンション
事業用オフィスビル、工場
店舗スーパーマーケット、飲食店

ただし、すべての建物が消費税の課税対象になるわけではありません。 築年数の経過や、建物の構造・規模によっては、消費税が課税されない場合もあります。

例えば、住宅用として使用されていた築20年以上の木造住宅や、簡易な構造の倉庫などは、消費税が課税されないケースが多いです。 また、増築や改築などにより、建物の構造や用途が変更された場合、消費税の課税対象となるかどうかが変わることがあります。

建物の売却にあたっては、事前に消費税の課税対象となるかどうかを確認しておくことが重要です。

– 土地(場合による)

原則として、土地の売却には消費税はかかりません。しかし、以下のケースに当てはまる場合は、土地の売却であっても消費税の課税対象となります。

ケース概要
土地造成販売等土地を造成したり、建物を建築するために土地を仕入れた場合など、事業目的で土地を売却する場合
非課税売主からの購入個人が所有する居住用以外の土地を売却する場合で、売主が消費税の免税事業者の場合
その他ゴルフ場用地の造成販売など、特定の要件を満たす土地の販売

これらのケースに該当するかどうかは、土地の利用状況や売却の経緯などによって判断されます。消費税の課税対象となるかどうか不安な場合は、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

課税事業者とは?

– 個人が課税事業者になるケース

個人で不動産売却を行う場合でも、場合によっては消費税の課税事業者とみなされることがあります。

ケース概要
不動産の販売を反復継続して行っている場合不動産の売買を事業として行っていると判断されるケースです。 売買の回数や頻度、期間などが考慮されます。
土地を造成して販売する場合土地の造成販売を事業として行っていると判断されるケースです。 5年以内の販売が複数回ある場合などが該当します。
マンションなどを建設して販売する場合マンションなどの建設販売を事業として行っていると判断されるケースです。 請負契約によって建設し、販売している場合などが該当します。

上記のようなケースに該当する場合、個人であっても消費税の納税義務が発生します。

不動産売却において消費税が発生するかどうかの判断は複雑な場合があります。不安な場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

消費税の計算方法

– 建物と土地の分離

売却する不動産に建物と土地の両方が含まれる場合、建物と土地をそれぞれ分けて消費税を計算する必要があります。

これは、建物は消費税の課税対象となる一方、土地は原則として課税対象外となるためです。

区分消費税
建物課税対象
土地原則として課税対象外

例えば、建物部分の売却価格が2,000万円、土地部分の売却価格が1,000万円、消費税率が10%だったとします。

この場合、建物部分にのみ消費税が課税され、その金額は200万円(2,000万円×10%)となります。

土地部分には消費税はかかりません。

そのため、売主様が買主様から受け取る売却価格は、建物部分の2,200万円(2,000万円+200万円)と土地部分の1,000万円を合わせた3,200万円となります。

– 消費税の税率

消費税の税率は、原則として10%です。

ただし、経過措置として、以下の期間においては8%の軽減税率が適用されます。

対象期間適用税率
2019年10月1日以降~8%

つまり、2019年9月30日までに不動産の売買契約が成立していれば、消費税率は8%となります。

しかし、2019年10月1日以降に売買契約が成立した場合には、消費税率は10%が適用されることになります。

なお、軽減税率の適用を受けるためには、一定の要件を満たしている必要があります。

詳細については、専門家にご確認ください。

3. 不動産売却における消費税の節税対策

不動産売却のタイミング

不動産売却のタイミングを検討することは、消費税対策として有効な場合があります。

タイミングメリットデメリット
消費税増税前売却価格が上昇する可能性がある増税前の駆け込み需要で売却が競合する可能性がある
消費税増税後売却価格が下落する可能性がある競合が少なくなるため、高値で売却できる可能性もある

消費税は、不動産の売却価格にかかるため、消費税率が 높아질수록 売主の負担も大きくなります。そのため、消費税増税前に売却することで、節税になる可能性があります。

一方で、消費税増税後は、不動産価格が下落する可能性があります。これは、消費税増税によって、不動産の購入を控える人が増えるためです。しかし、消費税増税後も、不動産需要の高い地域では、価格が維持または上昇する可能性もあります。

このように、不動産売却のタイミングは、さまざまな要因を考慮する必要があります。そのため、専門家にも相談しながら、慎重に判断することが重要です。

事業用不動産の売却

事業用不動産を売却する場合、消費税の取り扱いは複雑になる可能性があります。特に、以下の2つのケースでは注意が必要です。

ケース内容
課税事業者が事業用不動産を売却する場合消費税の課税対象となります。
免税事業者が事業用不動産を売却する場合原則として消費税は課税されませんが、一定の要件を満たすと課税対象となる場合があります。

事業用不動産の売却を検討する際には、自分が課税事業者に該当するかどうか、また、売却する不動産が課税対象となるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。

消費税の課税・非課税の判断は複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続と消費税

相続によって不動産を取得した場合、相続税の対象となることはよく知られていますが、消費税はかかるのでしょうか?

結論から言うと、相続によって取得した不動産には消費税はかかりません。

これは、相続は経済活動ではなく、個人の財産が移転する行為とみなされるためです。消費税は、あくまでも事業者が事業としてモノやサービスを提供する際に発生する税金であるため、相続には適用されません。

区分課税対象
相続税相続によって取得した財産
消費税相続によって取得した財産には課税されない

ただし、相続した不動産をその後、売却する場合には注意が必要です。相続から売却までの期間や売却時の状況によっては、消費税の課税対象となる可能性があります。相続不動産の売却を検討する際は、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

4. 消費税に関する手続き

納付方法と期限

消費税の納付方法には、以下の2種類があります。

納付方法説明
振替納税あらかじめ登録した預貯金口座から、納付日に自動的に引き落とされる方法です。
銀行、郵便局などの窓口納付納付書を使って、金融機関の窓口で納付する方法です。

消費税の納付期限は、原則として申告期限と同じです。ただし、不動産売却益が確定していないなどの理由で、申告期限までに納税が難しい場合は、申告期限の延長が認められる場合があります。

消費税の納付は、期限までに確実に行うようにしましょう。期限までに納付ができない場合は、延滞税や加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。

申告手続き

不動産の売却によって消費税の納税義務が生じる場合は、所定の期限内に税務署に申告書を提出する必要があります。

申告書の提出期限説明
課税期間が1月1日から12月31日の場合その年の12月31日の翌日から2か月以内
課税期間が1月1日から12月31日以外の場合課税期間の末日の翌日から2か月以内

申告書には、以下の内容を記載します。

  • 売却した不動産の物件情報
  • 売却価格
  • 消費税額
  • その他必要事項

なお、申告手続きは複雑な場合がありますので、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

必要書類

消費税の申告には、売却した不動産の種類や取引の内容に応じて、様々な書類が必要となります。主なものとしては、以下のようなものがあります。

書類名内容備考
売買契約書売却する不動産の取引内容が記載された契約書契約内容の詳細が分かるように提出する
登記事項証明書売却する不動産の所有者や権利関係を確認するための証明書売却する不動産の内容によって異なる
譲渡資産の明細書売却した資産の内容や取得価額などを記載した書類譲渡資産の内容が明確に分かるように記載する
消費税の申告書消費税の納付額などを計算して申告するための書類税務署で入手するか、国税庁のウェブサイトからダウンロードする

上記以外にも、必要に応じて追加で書類の提出を求められる場合があります。消費税の申告手続きは複雑な場合もあるため、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

5. まとめ

不動産売却における消費税は、売却する不動産の種類や売主の状況によって、その取り扱いが大きく変わる可能性があります。

ケース注意点
消費税課税対象取引の場合課税事業者となる可能性、納税義務
非課税取引の場合消費税還付の可能性
相続不動産の売却の場合被相続人の課税事業者判定

ご自身で判断することが難しい場合もあるため、消費税の専門家である税理士などに相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、想定外の税負担や手続きの遅延を防ぎ、スムーズな不動産売却を実現できるでしょう。