家の売却に必要な書類一覧|準備から提出までを徹底解説

1. 家の売却に必要な書類とは?

なぜ書類の準備が必要なのか

家の売却には、所有権移転や契約など様々な手続きが発生します。これらの手続きをスムーズに進め、売主・買主双方にとって安全な取引を行うためには、様々な書類が必要となります。

例えば、所有者情報に関する書類は、売主が本当にその家の所有者であることを証明するために必要です。物件情報に関する書類は、買主が購入の判断材料とするために必要となります。

書類の準備が不足しているとどうなる?
売却活動の遅延
買主とのトラブル発生
売却価格の減額交渉
最悪の場合、売却がキャンセルになる可能性も

このように、書類の準備不足は、売却活動の遅延やトラブルに繋がることがあります。場合によっては、売却価格の減額交渉や、最悪の場合、売却キャンセルに繋がる可能性も。事前にしっかりと準備しておくことが大切です。

売却活動の流れと提出書類

家の売却活動は、大きく分けて以下の流れで進みます。

売却活動の流れ具体的な内容提出書類例
1. 売却準備不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動の準備を行います。
2. 売出活動物件情報を掲載し、購入希望者を募ります。
3. 売買契約購入希望者と売買条件を交渉し、合意に至れば売買契約を締結します。売買契約書、重要事項説明書
4. ローン手続き購入者が住宅ローンを利用する場合、金融機関とのローン手続きを行います。住宅ローン契約書、住宅ローン残高証明書
5. 引き渡し準備残代金の支払い、抵当権の抹消など、引き渡しに向けた準備を行います。
6. 引き渡し売買代金の決済と同時に、物件の所有権を移転します。所有権移転登記申請書、抵当権設定登記申請書

これらの各段階で、さまざまな書類が必要となります。売却活動を進める上で、どの書類がいつ必要になるのかを把握しておくことが重要です。

2. 家の売却に必要な書類【所有者情報】

(1) 登記済権利証または登記識別情報通知

2022年4月より、不動産の所有権を証明する書類として、従来の「登記済権利証」に代わり「登記識別情報通知」が発行されています。

書類名概要
登記済権利証2022年3月以前に不動産を取得した際に交付された書類です。
登記識別情報通知2022年4月以降に不動産を取得した場合に交付される書類です。12桁の英数字からなる「登記識別情報」が記載されており、権利証と同様の役割を担います。

売却活動では、所有者が誰であるかを示すためにこれらの書類のいずれかが必要になります。

  • 登記済権利証は、不動産購入時に法務局から交付され、大切に保管されているケースが多いでしょう。
  • 一方、登記識別情報通知は、カード型で交付されるため、紛失のリスクもあります。通知を受け取った際には、大切に保管するようにしましょう。

もし、紛失してしまった場合は、再発行の手続きが必要となります。後ほど詳しく解説する「不動産会社への相談」を通じて、適切な対応を行いましょう。

(2) 身分証明書

家の売却手続きにおいて、売主であることを証明するために身分証明書は必要不可欠な書類です。

不動産取引では、売主が適正な権利者であることを確認する必要があります。そのため、運転免許証やパスポートなどの顔写真付きの身分証明書の提示が求められます。

有効期限内のものをご用意ください。

主な身分証明書の種類と、それぞれ有効期限内のものが必要かどうかを表にまとめました。

身分証明書有効期限内である必要がありますか?
運転免許証必要です
パスポート必要です
住民基本台帳カード(顔写真付き)必要です
マイナンバーカード必要です
在留カード必要です
特別永住者証明書必要です

顔写真付きの身分証明書がない場合は、健康保険証と住民票の写しなど、2点以上の書類が必要となる場合があります。詳細については、事前に不動産会社に確認しておきましょう。

(3) 印鑑証明書

印鑑証明書は、実印登録をしている市区町村役場で発行してもらう書類です。
不動産取引において、「この印鑑は間違いなく所有者のものです」ということを証明するために必要となります。

印鑑証明書を取得する際は、以下の点に注意しましょう。

注意点内容
印鑑証明書の有効期限発行日から3ヶ月以内
住所変更の有無登録している住所に変更がないか確認しましょう。
印鑑登録証の持参印鑑証明書を取得するには、印鑑登録証が必要です。

なお、印鑑証明書は、後ほど紹介する委任状や所有権移転登記申請書など、さまざまな場面で使用します。
紛失しないように大切に保管しておきましょう。

3. 家の売却に必要な書類【物件情報】

(1) 固定資産税評価証明書

固定資産税評価証明書は、毎年4月1日時点の土地や建物の評価額が記載された書類です。固定資産税や都市計画税の算出根拠となる重要な書類であり、不動産取引においても必要となります。

項目内容
交付機関市区町村役所の税務課
必要書類・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・印鑑(認印可)
交付手数料数百円程度
有効期限交付日から3ヶ月程度

固定資産税評価証明書は、役所に取りに行くか、郵送で請求することができます。発行には数日かかる場合があるため、余裕を持って取得しておきましょう。なお、有効期限が過ぎると無効になってしまうため、注意が必要です。

(2) 土地・家屋測量図

土地・家屋測量図は、土地の境界線や建物の位置、形状、面積などを正確に記した図面のことです。

この図面がない場合は、土地の境界が不明確なため、売却手続きがスムーズに進まない可能性があります。

図面の種類内容
土地測量図土地の境界線や面積、高低差などが記載されています。
家屋測量図建物の位置、形状、面積などが記載されています。

土地・家屋測量図は、法務局で取得できる場合もありますが、測量費用や時間がかかることがあります。もし、お手元になく、新たに作成する場合は、不動産会社に相談することをおすすめします。

(3) 建築確認済証

建築確認済証とは、建築基準法に基づいて建築物の計画が適法であると確認された証です。

新築や増築などの際に確認申請を行い、建築主事をはじめとした確認検査機関による審査を経て交付されます。

住宅の売却時には、以下の情報を確認するために必要となります。

確認内容詳細
建築基準法への適合建築基準法に基づいた建築物であることを証明します。
増改築の有無過去の増改築の有無を確認できます。
違法建築でないことの証明建築確認済証がない場合は、違法建築の可能性があるため、売却が難航する可能性があります。

建築確認済証は、住宅ローンの審査においても重要な書類です。住宅ローンを利用して住宅を購入する際には、金融機関から建築確認済証の提出を求められます。

なお、建築確認済証を紛失した場合には、再発行の手続きが必要となります。

(4) 建築設計図

建築設計図は、住宅の設計内容を示した図面です。間取りや構造、設備などが詳細に記されています。

新築住宅を購入した際に受け取っている場合が多いですが、紛失してしまうケースも少なくありません。築年数が経過している物件の場合、確認申請の義務がない時代に建てられたものであれば、そもそも建築設計図が存在しない可能性もあります。

建築設計図の内容説明
平面図各階の部屋の配置や広さ、ドアや窓の位置などを示した図面
立面図建物の外観を東西南北の各方向から見た図面
断面図建物を垂直に切断した際に内部構造が見える図面
基礎伏図基礎の配置や形状、鉄筋の配筋などを示した図面

建築設計図は、建物の構造や増改築の可能性を判断するために必要な情報です。購入希望者は、これらの図面を確認することで、物件の状態をより深く理解することができます。

(5) 設備図面・仕様書

設備図面・仕様書とは、住宅設備に関する詳細な情報をまとめた書類です。 家の売却において、購入希望者に対して、住宅設備の内容を具体的に伝えるために必要となります。

書類名内容
設備図面キッチン、浴室、トイレなどの設備の位置やサイズ、配管などを図解した図面
仕様書使用されている設備のメーカー名、品番、性能などを記載した書類

設備図面・仕様書は、築年数の経過した物件では、紛失しているケースもあります。新築時にもらった書類などを保管している場合は、事前に確認しておきましょう。

これらの書類を提出することで、購入希望者は、住宅設備の状態を具体的に把握することができます。結果として、安心して購入の検討を進めることに繋がるでしょう。

(6) 売主が知っておくべき重要事項説明書

「売主が知っておくべき重要事項説明書」とは、売主が買主に提供する物件に関する重要な情報が記載された書類です。 不動産の専門用語や法律用語を分かりやすく解説することで、買主が安心して購入の判断をできるように作成する必要があります。

この説明書には、主に下記のような項目が記載されます。

項目内容
物件概要所在地、土地面積、建物構造、築年数、間取りなど、物件の基本情報
法令上の制限都市計画法、建築基準法などの法令による制限
私法上の制限私道負担、借地権など、物件に設定されている権利関係
環境近隣環境、騒音、日当たり、交通量など
設備ガス、水道、電気などの設備状況
その他取引条件、瑕疵担保責任、契約解除に関する事項など

売主は、この説明書の内容について、買主に対して口頭で説明する義務があります。買主が納得した上で契約を締結できるように、事前にしっかりと内容を確認しておきましょう。

(7) 付帯設備・物件状況等報告書

付帯設備・物件状況等報告書とは、売却する物件にどのような設備があるのか、物件の状態はどうなっているのかを買主様に伝えるための書類です。
売買契約締結後にトラブルにならないように、物件の状態を正確に伝えましょう。

項目内容例
建物の状況雨漏りの有無、シロアリの発生状況など
設備給湯器の種類、エアコンの型番、設置年数など
その他リフォーム履歴、近隣環境など

例えば、給湯器の故障を隠して売却した場合、後々トラブルになる可能性があります。
後々のトラブルを避けるためにも、正直に物件の状態を記載することが大切です。

4. 家の売却に必要な書類【住宅ローン関連】

(1) 住宅ローン契約書

住宅ローンを完済していない場合、売却活動を進める上で、住宅ローンの残債や抵当権の設定状況を確認する必要があります。

住宅ローン契約書には、以下の内容が記載されています。

項目内容
ローン借入額借入したローンの金額
金利ローンの適用金利
返済期間ローンの返済期間
返済方法ローンの返済方法(元利均等返済など)
抵当権設定抵当権が設定されているかどうか

これらの情報を確認することで、売却活動を進める準備や、住宅ローンの残債を完済するための計画を立てることができます。

(2) 住宅ローン残高証明書

住宅ローン残高証明書は、住宅ローンの残りの借入額がいくらあるのかを証明する書類です。住宅ローンを完済していない状態で家を売却する場合に、金融機関から発行してもらいます。

住宅ローン残高証明書には、以下の情報が記載されています。

項目内容
借入日住宅ローンの契約をした日付
借入金額住宅ローンの当初の借入金額
残高住宅ローン残高証明書の発行日時点での残りの借入金額
金利住宅ローンの金利
返済期間住宅ローンの返済期間
完済予定日住宅ローンの完済予定日

住宅ローン残高証明書は、売却活動が本格化する前に取得しておくとスムーズです。残りの借入金額によっては、売却金額で住宅ローンを完済できるのか、あるいは追加で資金が必要になるのかが分かります。

5. 家の売却に必要な書類【マンション売却の場合】

(1) 管理規約

マンションは、区分所有法に基づき、多くの住民が共同生活を送る集合住宅です。そのため、共有部分の利用や管理、修繕などに関するルールが「管理規約」として定められています。マンション売却時には、買主が事前にマンションのルールや制約事項について理解しておく必要があり、売主は管理規約を提出することが求められます。

項目内容例
使用に関するルールペット飼育の可否、楽器演奏の時間制限、共用部分の使用規則など
管理・運営に関する事項管理組合の組織、運営方法、管理費や修繕積立金の金額、長期修繕計画など
マンションの維持・修繕に関する事項修繕工事の実施方法、費用負担の割合など
その他駐車場や駐輪場の利用規則、専用使用権の設定など

管理規約の内容はマンションによって大きく異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

(2) 修繕積立金状況

マンションの共有部分の修繕や維持管理のために積み立てられている「修繕積立金」。マンション売却時には、この修繕積立金の状況についても確認する必要があります。具体的には、以下の3つの書類をマンション管理会社に発行してもらいましょう。

書類名内容
修繕積立金残高証明書売主が売却時点で支払っている修繕積立金の残高が記載されています。
修繕積立金納入証明書過去に滞納なく修繕積立金を支払っていたことを証明する書類です。
長期修繕計画書マンションの長期的な修繕計画がまとめられています。今後の修繕費用や時期の目安がわかります。

これらの書類は、買主がマンションの購入を検討する上で重要な判断材料となります。修繕積立金の残高が十分でなかったり、滞納があったりすると、購入者が不安に感じてしまう可能性があります。また、長期修繕計画の内容によっては、購入後に修繕積立金や一時金の負担が増える可能性もあるため、事前に確認しておくことが大切です。

(3) 理事会議事録

マンションの管理や運営に関する重要な決定事項が記録されている理事会議事録は、マンション売却時に買主が確認すべき書類の一つです。

過去の理事会議事録の内容によっては、売却価格に影響を与える可能性もあります。

内容重要性売却への影響例
大規模修繕工事の実施時期や費用に関する事項買主にとって負担の大きい修繕計画は事前に把握しておきたいポイント・直近で大規模修繕工事が予定されている場合は、売却価格が下がる可能性がある
・過去の大規模修繕工事の際に、トラブルがあった場合は、売主は状況を説明する必要がある
ペット飼育に関する事項ペット飼育を希望する買主は重要な確認事項・ペット飼育が禁止されているマンションの場合、ペットを飼っている売主は、売却前に引っ越しが必要になる
・ペット飼育に関するルールが厳しい場合、売却活動に影響が出る可能性がある
民泊に関する事項近年、注目されている事項・民泊が禁止されているマンションの場合、投資目的で購入を検討している買主は、購入を見送る可能性がある

過去の理事会議事録の内容を確認しておくことで、売却活動がスムーズに進む可能性が高まります。

6. 書類の準備をスムーズに進めるポイント

(1) 不動産会社に相談する

家の売却活動は、多くの場合不動産会社に仲介を依頼します。不動産会社は、豊富な知識と経験に基づいて、売却活動全体をサポートしてくれる心強い存在です。

売却に必要な書類についても、不動産会社に相談することで、以下のようなメリットがあります。

メリット説明
必要書類の確認売却する物件の種類や状況に応じて、必要な書類をリストアップしてもらい、抜け漏れなく準備を進めることができます。
書類収集のサポート登記簿謄本などの専門性の高い書類の取得も、不動産会社が代行してくれる場合があります。
書類作成のアドバイス重要事項説明書など、専門知識が必要な書類の作成についても、アドバイスやサポートを受けることができます。
不明点の解消書類の内容や手続きに関する疑問点を、その場で解決することができます。

これらのサポートを受けることで、売主は安心して売却活動に専念することができます。

また、不動産会社によっては、無料で売却相談を受け付けているところもあります。

売却を検討し始めた段階で、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。

(2) 事前に必要書類を確認する

家の売却には、上記のように様々な書類が必要となります。事前にどのような書類が必要なのかを把握しておくことで、後々の準備がスムーズに進みます。

必要書類は、売却する物件の種類や状況によって異なります。
例えば、以下の表をご覧ください。

ケース必要書類に追加で必要なもの
土地を売却する場合・分筆登記がある場合は、分筆前の地積がわかる書類
・私道負担がある場合は、位置指定道路の図面
・借地権、地上権などが設定されている場合は、権利関係のわかる書類
中古マンションを売却する場合・専有部分の登記簿謄本(マンションの場合)
・管理規約、使用細則
・直近の修繕積立金に関する書類
新築住宅を売却する場合・工事請負契約書
・住宅性能評価書

このように、売却する物件によって必要書類は異なります。
事前に不動産会社に相談し、自分のケースではどのような書類が必要なのかを確認しておきましょう。
また、紛失しやすい書類もあるため、事前に確認しておくことで、再発行の手続きなども余裕をもって行うことができます。

(3) 紛失した書類は再発行できる場合も

売却活動がスムーズに進むよう、必要な書類は早めに準備を始めましょう。中には「書類を紛失してしまった…」という方もいるかもしれません。しかし、諦めるのはまだ早いです。多くの書類は再発行が可能です。

例えば、下記のように再発行できます。

書類名再発行方法
登記済権利証法務局で手続き
印鑑証明書住民登録をしている市区町村役場で手続き
固定資産税評価証明書市区町村役所の税務課で手続き
建築確認済証建築確認を行った行政庁で手続き

ただし、書類によっては再発行に時間がかかる場合や、場合によっては再発行が難しいケースもあります。そのため、まずは不動産会社に相談することをおすすめします。状況に応じて適切なアドバイスをもらえます。

7. まとめ:早めの準備でスムーズな売却を

家の売却活動において、必要書類の準備は非常に重要なプロセスです。事前にしっかりと準備しておくことで、売却活動がスムーズに進み、買い手とのトラブル防止にもつながります。

早めの準備がおすすめの理由

メリット説明
売却活動の期間短縮必要書類が揃っていれば、買い手を探すための販売活動にスムーズに移行できます。
売却価格の交渉を有利にきちんとした書類が揃っていると、買い手に安心感を与え、売却価格の交渉を有利に進めやすくなります。
トラブルリスクの軽減不備や不足書類があると、売買契約が遅延したり、最悪の場合、契約解除になる可能性もあります。事前に準備しておくことで、このようなトラブルリスクを軽減できます。

必要書類の中には、取得に時間がかかるものもあるため注意が必要です。例えば、登記済権利証の再発行や住宅ローン残高証明書の取得などは数日かかる場合があります。余裕を持った準備を心がけましょう。