不動産売却後の住民税はどうなる? 計算方法や注意点、節税対策を解説

1. 不動産売却で住民税はどうなる?

不動産を売却して利益が出た場合、その利益(譲渡所得)に対して住民税が課税されます。

項目内容
税金の種類住民税(所得割)
課税対象不動産の譲渡所得
納税義務者売却した人

ただし、不動産の売却によって必ず住民税が上がるとは限りません。

なぜなら、住民税は前年度の所得を元に計算されるからです。 つまり、不動産を売却した年の翌年に、売却益に応じた住民税の納付義務が発生します。

詳細な仕組みや計算方法については、以降で詳しく解説していきます。

2. 不動産売却で住民税が上がる仕組み

(1)譲渡所得に対して課税される

不動産を売却して利益が出た場合、その利益は「譲渡所得」として所得税と住民税の課税対象になります。

課税税金の種類
国税所得税
地方税(都道府県・市町村)住民税

つまり、不動産売却益に対しては、国と地方自治体双方に納税する義務が生じるということです。

住民税は、前年度の所得を基準に計算されますが、不動産の譲渡所得のように、前年度にはなかった所得が発生した場合は、その年の住民税にも影響を及ぼします。

(2)住民税は前年度の所得を元に計算される

住民税は、1月1日~12月31日までの1年間の所得に対して課税されますが、その年の所得が確定してから税額を計算するのは時間的に難しいです。

そのため、住民税は前年度の所得を基準に計算し、翌年に納付する仕組みになっています。

例えば、2023年に不動産を売却して利益が出た場合、その利益は2023年の所得として計上されます。しかし、2023年の住民税は既に前年の所得に基づいて計算され、納付も終わっています。

つまり、2023年に不動産を売却したことで発生する住民税は、2024年6月から2025年5月にかけて納付することになります。

3. 不動産売却後の住民税の計算方法

(1)譲渡所得の計算方法

不動産を売却して利益が出た場合、その利益は「譲渡所得」と呼ばれ、所得税と住民税の対象となります。譲渡所得は、以下の計算式で求められます。

項目説明
売却価格不動産を売却して実際に受け取った金額
取得費不動産を取得するためにかかった費用
売却費用不動産を売却するためにかかった費用
譲渡所得(売却価格 – 取得費 – 売却費用)

取得費には、不動産の購入代金のほか、不動産会社に支払った仲介手数料、ローン契約にかかった費用などが含まれます。売却費用には、印紙税、不動産会社に支払う仲介手数料、測量費用などが含まれます。これらの費用を正確に計算することで、譲渡所得を減らし、住民税の負担を軽減できる可能性があります。

(2)住民税の税率

住民税の税率は、一律ではありません。お住まいの都道府県や市区町村によって異なり、さらに次の2種類に分けられます。

  • 均等割: 所得に関わらず、一律で課税される部分です。
  • 所得割: 前年の所得金額に応じて税率が変わる部分です。
区分税率
均等割都道府県民税:1,500円
市町村民税: 3,500円
所得割所得金額に応じて、約6%~10%

例えば、東京都にお住まいの場合、住民税の所得割は10%となります。前年の所得金額が500万円であれば、所得割は50万円です。

このように、住民税は所得や居住地によって金額が変わります。不動産売却によって所得が増える場合には、住民税の税額も増加する可能性がありますので、注意が必要です。

4. 不動産売却後の住民税 いつ・どうやって払う?

(1)納付時期

不動産売却によって譲渡所得が発生し、住民税の納付額が増える場合、翌年度の住民税として納付します。

住民税の種別納付時期
前年度分の住民税(普通徴収)6月、8月、10月、翌年1月(4回払い)
前年度分の住民税(特別徴収)6月から翌年5月までの毎月の給与から天引き
当年度分の住民税住民税の申告があった年の翌年の6月からその翌々年の5月までの1年間(特別徴収)

不動産を売却した年の住民税は、前年の所得を元に計算されるため、売却益は反映されません。売却益に対する住民税は、翌年6月頃から始まる翌年度分の住民税として納付することになります。

住民税の納付時期は、普通徴収と特別徴収のどちらを選択するかによって異なります。以下で詳しく見ていきましょう。

(2)納付方法:普通徴収と特別徴収

不動産売却によって発生した住民税は、普通徴収または特別徴収のいずれかの方法で納付します。

納付方法普通徴収特別徴収
対象者給与所得者以外の方給与所得者
納付方法納付書で金融機関などに納付給与から天引き
納付回数年4回(6月・8月・10月・1月)年12回(毎月の給与から天引き)

給与所得者以外の方は、原則として、市区町村から送付される納付書を使用して、自身で金融機関やコンビニエンスストアなどで納付します。一方、給与所得者の場合は、勤務先が給与から住民税を天引きし、代わりに納付する特別徴収が一般的です。

5. 不動産売却後の住民税 節税対策

(1)3,000万円特別控除

不動産を売却して利益が出た場合でも、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。これを3,000万円特別控除といいます。

要件内容
対象となる不動産所有期間が5年を超える居住用財産(マイホーム)
控除対象となる譲渡収用等による譲渡や、特定の親族に対する贈与など
控除額居住用財産の譲渡所得が3,000万円以下の場合:譲渡所得の全額
居住用財産の譲渡所得が3,000万円を超える場合:3,000万円

この控除を受けることで、譲渡所得が減少し、その結果、住民税の負担も軽減されます。3,000万円特別控除を受けるためには、確定申告時に必要な書類を添付して申告する必要があります。

(2)買い換え特例

買い換え特例とは、一定の条件を満たす場合に、売却によって発生した譲渡所得を新しい住宅の購入費用に充てることで、住民税の課税対象となる所得から控除できる制度です。

要件内容
買い換え対象住宅・土地・建物が一体となった居住用の一戸建て住宅、マンション
・取得後3年経過するまでが対象
買い換え後の住宅・土地・建物が一体となった居住用の一戸建て住宅、マンション
・取得後3年経過するまでが対象
買い換え期間売却した年の前年1月1日から後年12月31日までの間
譲渡所得の金額の要件控除を受ける年の所得税の課税譲渡所得の金額が、1000万円以下であること。
適用を受けるための手続き住宅の取得後、確定申告書に必要書類を添付して提出する

買い換え特例の適用を受けるためには、いくつかの要件を満たしている必要があります。適用を受けるための手続きなど、詳しくは税務署や税理士などの専門家にご確認ください。

(3)長期譲渡所得の軽減税率

不動産を5年以上保有して売却した場合には、「長期譲渡所得」に区分され、税率が優遇されます。

区分税率
短期譲渡所得(所有期間5年以内)39.63%
長期譲渡所得(所有期間5年以上)20.315%

上記の通り、長期譲渡所得の場合、税率が約半分になるため、大きな節税効果が期待できます。

なお、所有期間は、取得の日から売却の日までで計算します。

例えば、2018年5月1日に不動産を取得し、2023年5月2日に売却した場合、所有期間は5年と1日となるため、長期譲渡所得に該当します。

(4)ふるさと納税

ふるさと納税を活用して、住民税の節税をすることも可能です。ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付を行うことで、所得税や住民税の控除を受けられる制度です。

不動産売却によって譲渡所得が発生した場合でも、ふるさと納税を行うことで、一定額を上限に住民税を軽減できます。

控除額の計算式控除上限額
寄付金額 – 2,000円所得税・住民税の控除の上限額

控除上限額は、収入や家族構成などによって異なります。

ふるさと納税の活用は、節税効果だけでなく、寄付を通して地域貢献できるというメリットもあります。

6. 注意点:確定申告は不要!

不動産を売却した際には、確定申告が必要かどうか気になる方もいるかもしれません。ご安心ください。不動産売却による譲渡所得にかかる住民税は、確定申告は不要です。

住民税は、原則として前年の所得に基づいて計算され、市区町村が課税を行います。不動産売却益などの所得情報は、税務署から市区町村へ自動的に提供されます。そのため、私たち自身で確定申告をする必要はありません。

ただし、以下のような場合には確定申告が必要となる場合があります。

条件詳細
給与所得以外に複数の所得がある場合不動産売却益以外に、事業所得や雑所得などがある場合
住民税の申告が必要な控除を受けたい場合医療費控除や寄附金控除など、確定申告をすることで住民税が軽減される控除を受けたい場合

ご自身の状況に応じて、確定申告の要否を確認するようにしましょう。

7. まとめ:不動産売却後の住民税もしっかりと理解しておこう

不動産売却益が出た場合は、翌年の住民税に影響します。 というのも、住民税は前年度の所得に対して課税されるためです。

不動産売却によって住民税が上がる可能性を踏まえ、事前にしっかりと仕組みや計算方法、節税対策を理解しておくようにしましょう。

項目内容
課税対象前年の所得
計算方法譲渡所得 × 住民税率
納付時期6月〜翌年5月(年12回)
節税対策3,000万円特別控除、買い換え特例など

あらかじめ準備しておけば、納税時に慌てることもありません。 専門家への相談も有効活用しながら、適切な対応を心がけましょう。