1.はじめに:実家を相続したら、まずは固定資産税の確認を!
実家を相続したものの、誰も住む予定がなく空き家になってしまう…というケースは少なくありません。 そのような場合、忘れずに確認しなければならないのが固定資産税です。
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地や建物の所有者に対して課税されるため、相続によって所有者が変われば、納税義務者も変わります。 相続した空き家をそのまま放置しておくと、予期せぬ税負担が発生する可能性もあるため注意が必要です。
本記事では、空き家の固定資産税について、誰がどのように支払うのか、具体的な計算方法や税額、支払わない場合のリスク、そして有効な税金対策まで詳しく解説していきます。
実家を相続された方は、ぜひ本記事を参考にして、ご自身に合った対策を検討してみてください。
2.空き家の固定資産税は誰が支払う?
基本は1月1日時点の所有者が納税義務者
空き家の固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者が支払う義務があります。これは、その年の途中で所有者が変わったとしても、1月1日時点で所有者であった人が、その年の固定資産税を全額負担する必要があるということです。
時期 | 所有者 | 納税義務者 |
---|---|---|
1月1日 | Aさん | Aさん |
7月1日 | Bさん(相続) | Aさん |
例えば、上記表のように、7月1日に相続によって所有者がAさんからBさんに変わった場合でも、その年の固定資産税は前の所有者であるAさんに納税義務があります。
これは、固定資産税が、1月1日時点の土地や建物の状況に応じて課税されるからです。そのため、所有者が変わったとしても、その年の固定資産税の負担者まで変わることはありません。
相続発生後の納税義務者変更手続き
実家を相続した場合、固定資産税の納税義務者を変更する手続きが必要です。手続きを行わないと、亡くなった方が生前に納めていたのと同様に、相続人全員に納税通知書が届く可能性があります。
相続発生後の納税義務者変更は、以下の2つの方法で行います。
方法 | 概要 |
---|---|
相続人代表者による変更 | 相続人の中から代表者を決め、代表者が所有者として固定資産税を納付する方法です。 |
共有による変更 | 相続人全員が共有者として、それぞれの持分割合に応じて固定資産税を納付する方法です。 |
いずれの方法で変更するかは、相続人同士でよく話し合って決めることが大切です。手続きには、以下の書類などを市区町村の窓口に提出する必要があります。
- 固定資産税申告書
- 相続関係を証明する書類(戸籍謄本など)
- 遺産分割協議書(共有で変更する場合)
なお、変更手続きは、相続発生を知った日から1年以内に行う必要があります。期限を過ぎると、ペナルティとして延滞金が発生する可能性があります。
相続放棄した場合の納税義務
相続放棄は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産である借金などの負債も全て相続しないという手続きです。そのため、相続放棄が認められると、固定資産税の納税義務もなくなります。
しかし、相続放棄の手続きが完了するまでは、相続人は固定資産税の納税義務を負う可能性があります。相続放棄は、家庭裁判所への申述期限である自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。
時期 | 納税義務者 |
---|---|
相続発生~相続放棄手続き完了まで | 原則として相続人全員 |
相続放棄手続き完了後 | 相続放棄が認められれば、納税義務はなくなります。 |
相続放棄を検討する場合は、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
3.固定資産税の計算方法と税額
固定資産税評価額に基づく算出
固定資産税は、毎年1月1日時点の状況に基づいて算出されます。その算出の基礎となるのが「固定資産税評価額」です。
固定資産税評価額は、市区町村役場の職員が土地や建物の状況を調査し、評価基準に基づいて算出します。評価額は3年に一度見直されるのが一般的ですが、地価の下落が著しい場合などには、評価額が据え置かれたり、下落したりする場合もあります。
固定資産税額は、この固定資産税評価額に標準税率(1.3%)を乗じて算出されます。ただし、住宅用地に適用される軽減税率や、特定空家に該当する場合の加算税率など、税率が異なるケースもあります。
項目 | 内容 |
---|---|
固定資産税評価額 | 市区町村が評価する |
評価の頻度 | 原則として3年に1度 |
固定資産税の税率 | 標準税率は1.3% |
このように、固定資産税は固定資産税評価額を基に算出されます。評価額や税率については、各自治体のホームページなどで確認できます。
住宅用地の特例による減税の可能性
固定資産税は、土地の評価額に基づいて計算されますが、「住宅用地の特例」を適用することで、税負担を軽減できる場合があります。
特例の内容 | 適用条件 | 税負担軽減額 |
---|---|---|
小規模住宅用地 | 200㎡までの住宅用地 | 住宅用地の面積に応じて、最大6分の1に軽減 |
特定住宅用地 | 敷地面積の上限が緩和されるなど、小規模住宅用地の適用要件を満たさない場合でも適用できるケースあり | 住宅用地の種類や面積に応じて、最大2分の1に軽減 |
空き家は、居住用の建物ではなくなっているため、原則として住宅用地の特例の適用を受けることはできません。しかし、以下のいずれかの条件を満たす場合は、適用が可能となるケースがあります。
- 相続発生時に被相続人が住んでいた家である
- 将来的に居住する予定があり、その期間が概ね3年以内である
適用が可能かどうかは、個々の状況によって判断されるため、事前に自治体へ確認することをおすすめします。
特定空家指定による増税リスク
放置された空き家は、周辺環境への悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、一定の要件を満たす空き家は「特定空家等」に指定され、固定資産税の優遇措置が受けられなくなる場合があります。
特定空家等の指定要件(例) |
---|
・倒壊などの危険がある |
・衛生上有害な状態である |
・著しく景観を損なっている |
・周辺の生活環境に悪影響を及ぼしている |
特定空家等に指定されると、住宅用地の特例(後述)が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍に増税される可能性があります。
空き家を放置すると、思わぬ増税リスクを負うことになるため注意が必要です。
4.空き家の固定資産税を支払わないとどうなる?
延滞金発生の可能性
固定資産税を納付期限までに支払わない場合、延滞金が発生する可能性があります。延滞金の利率は、法定で定められており、納付が遅れるほど、その利率は高くなります。
期間 | 年利 |
---|---|
納期限の翌日~2か月以内 | 2.7% |
2か月を超過~ | 7.3% |
10か月を超過~ | 9.9% |
例えば、固定資産税が10万円で、納期限から3か月後に納付した場合、約2,000円の延滞金が発生します。(10万円×7.3%÷365日×90日)
延滞金は放置すると、さらに高額になる可能性があります。未納の状態が続くと、最悪の場合、財産の差し押さえに至る可能性も考えられます。固定資産税の納付は、延滞金や差し押さえのリスクを避けるためにも、期限内に適切に行うようにしましょう。
財産差し押さえの可能性
固定資産税を滞納し続けると、最終的には財産の差し押さえを受ける可能性があります。
滞納期間 | 措置 |
---|---|
納期限から約2か月後 | 督促状の発送 |
督促状発送後約20日以内 | 財産の調査 |
調査後 | 財産差し押さえ |
固定資産税の支払いには納税義務者の預貯金や給与、不動産などが対象となる可能性があります。最悪の場合、競売にかけられ、売却代金が滞納税金の支払いに充てられることもあります。
滞納によってこのような事態を避けるためにも、固定資産税の支払いが難しい場合は、お住まいの自治体へ相談することをおすすめします。
5.空き家の税金対策
売却による納税義務の解消
空き家の固定資産税対策として有効なのが、売却です。売却すれば、売却益が出た場合に譲渡所得税が発生する可能性はありますが、その後は固定資産税の納税義務を負う必要はなくなります。
メリット | デメリット |
---|---|
固定資産税の納税義務から解放される | 売却活動や手続きに時間や手間がかかる場合がある |
売却益を他の用途に活用できる | 希望するタイミングで必ず売却できるとは限らない |
空き家の売却を検討する際は、以下の点に注意する必要があります。
- 売却価格: 現在の不動産市況や物件の状態などを考慮して、適切な価格設定を行う必要があります。
- 売却にかかる費用: 仲介手数料や印紙税などの費用が発生します。
- 売却後の手続き: 固定資産税の納税義務がなくなるよう、売買契約書などの必要書類を適切に処理する必要があります。
空き家の売却は、将来的に発生し続ける固定資産税の負担をなくす効果的な方法と言えるでしょう。
住宅用地の特例適用条件の確認
固定資産税の負担を軽減するために、「住宅用地の特例」の適用条件を満たしているか確認しましょう。この特例は、住宅が建っている土地の固定資産税を軽減する制度です。
要件 | 内容 |
---|---|
土地の所有者 | 個人であること(共有の場合は共有者全員が個人であること) |
土地の利用状況 | 住宅の敷地として利用されていること |
住宅の床面積 | 200㎡以下であること(マンションの場合は専有面積) |
居住用として使用されていること | 自分や家族が住んでいる、貸付住宅として使用している(賃貸借契約書が必要)、別荘として使用している(年間60日以上利用)など |
これらの条件を満たさない場合、特例が適用されず、高い税負担が発生する可能性があります。空き家になった場合でも、一定の要件を満たせば特例を受けられる場合がありますので、詳細については専門家にご相談ください。
効果的な空き家対策の検討
空き家の税金対策として、状況に合わせて様々な対策を検討する必要があります。代表的な対策として、以下の3つが挙げられます。
対策 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
売却 | 不動産会社などに仲介を依頼し、買い手を探す | 売却益を得られる場合がある。 | 売却活動や費用、譲渡税が発生する可能性がある。 |
賃貸 | 入居者を募集し、家賃収入を得る | 定期的な収入を得られる。 | 空き家の管理や修繕費用、賃貸経営の知識や手間が必要になる。 |
空き家管理サービスの利用 | 専門業者に空き家の管理を委託する | 定期的な点検や清掃により、建物の劣化を防ぐことができる。 | 管理費用が発生する。 |
ご自身の状況や希望に合わせて、最適な対策を検討しましょう。
6.まとめ:専門家への相談がおすすめ
空き家の固定資産税は、所有者が状況に応じて適切な対応をとることが重要です。
相続や税金に関する知識がないまま放置してしまうと、予期せぬ税負担や延滞金が発生する可能性もあります。
専門家 | 相談内容例 |
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税理士 | ・固定資産税の計算や税金対策 ・相続税に関する相談 |
不動産会社 | ・空き家の売却 ・空き家の管理 |
司法書士・弁護士 | ・相続放棄の手続き ・不動産に関する法的トラブル |
お困りの際は、税理士や不動産会社などの専門家に相談し、状況に合わせた最適なアドバイスを受けるようにしましょう。