特定空き家に要注意!固定資産税が最大6倍になる条件と対策

1. はじめに:放置すると怖い特定空き家問題

人口減少や高齢化を背景に、増加の一途をたどる空き家。 その中でも、適切な管理がされずに放置されている「特定空き家」は、 私たちの暮らしにとって大きな脅威となっています。

問題点説明
倒壊の危険性老朽化した建物は、地震や台風などで倒壊し、周囲に被害を及ぼす可能性があります。
犯罪の温床人通りの少ない空き家は、犯罪者にとって格好の隠れ家や犯行現場になりかねません。
火災発生のリスク不審火や放火の対象となる可能性があり、周囲に延焼する危険性も高まります。
景観の悪化雑草が生い茂ったり、ゴミが放置されたりするなど、地域の景観を損ね、不動産価値の低下にも繋がります。
衛生上の問題害虫やネズミの発生源となり、近隣住民の健康や生活環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

放置された空き家をそのままにしておくと、 あなた自身だけでなく、地域全体に悪影響を及ぼす可能性があることを認識しておく必要があります。

2. 特定空き家とは?

2-1. 放置された空き家の増加が社会問題に

近年、日本では少子高齢化や人口減少に伴い、空き家の数が年々増加しています。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、2018年の空き家数は849万戸と過去最多を更新し、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%にものぼります。

調査年総住宅数(万戸)空き家数(万戸)空き家率(%)
2008年5,75675713.1
2013年6,06382013.5
2018年6,24284913.6

出典:総務省「住宅・土地統計調査」

この空き家の増加は、景観の悪化、治安の悪化、防災上の問題など、様々な社会問題を引き起こす要因として懸念されています。放置された空き家は、適切な管理が行われないまま劣化が進み、倒壊の危険性が高まります。また、犯罪に利用されたり、不法投棄の温床となったりするケースも少なくありません。さらに、火災が発生した場合には、周囲に延焼するリスクも高まります。

2-2. 倒壊、犯罪、景観悪化…様々なリスクを抱える「特定空き家」

放置された空き家は、私たちの暮らしにとって、さまざまなリスクをもたらします。

例えば、以下のような問題が挙げられます。

問題内容
倒壊の危険性老朽化による建物の倒壊は、周囲の人々や建物に被害を及ぼす可能性があります。
犯罪の温床人目につかない空き家は、犯罪に利用されやすく、放火の可能性も考えられます。
景観の悪化雑草が生い茂ったり、ゴミが放置された空き家は、地域の景観を損ない、周辺の不動産価値にも影響を与える可能性があります。
衛生上の問題ネズミや害虫の発生源となり、近隣住民の生活環境を悪化させる可能性があります。

このように、放置された空き家は、放置しておくと、地域住民の生活の安全・安心を脅かす存在になりかねません。 そのため、放置された空き家に対して、適切な対策を講じることが重要です。

2-3. 「空き家」と「特定空き家」の違い

空き家が増加する中で、特に問題視されているのが「特定空き家」です。 「空き家」と「特定空き家」は、どちらも居住者がいない状態である点は共通していますが、周囲に与える影響や法的扱いが異なります。

区分定義法的扱い
空き家建築物またはその一部が居住その他の使用がなされていない状態特に無し
特定空き家倒壊などにより危険 であったり、景観を損なっている など、周辺環境に悪影響を及ぼす可能性のある空き家のこと固定資産税の優遇措置の対象外 となるなど、様々なペナルティ が存在する

つまり、すべての空き家が「特定空き家」に該当するわけではありません。 放置された空き家の状態が悪化し、周囲に悪影響を及ぼす可能性があると判断された場合に、「特定空き家」に認定されることになります。 具体的な認定基準は後述します。

3. あなたの空き家は大丈夫?特定空き家の認定基準

3-1. 市区町村による判断基準

特定空き家かどうかは、一律の基準ではなく、それぞれの市区町村が条例で定めています。

そのため、お住まいの地域によって、認定基準に違いが生じる点に注意が必要です。

項目説明
定義「特定空き家」の定義や該当する空き家の状態
適用除外特定空き家とみなされないケース
認定基準特定空き家と認定される具体的な基準
その他その他、市区町村が定める事項

例えば、建物の状態や周辺環境への影響など、具体的な項目を挙げて、どの程度であれば特定空き家とみなされるのかを明確に定めています。

ご自身の空き家が特定空き家に該当するか不安な場合は、お住まいの地域の市区町村役場の担当窓口に問い合わせてみましょう。

3-2. 判断材料となる具体的なチェック項目

特定空き家かどうかは、市区町村が現地調査を行い、様々な角度から総合的に判断します。

代表的なチェック項目は以下の通りです。

チェック項目内容
建物の外観・状態・屋根の破損や外壁の剥がれがあるか
・窓ガラスが割れたり、サッシが腐食していないか
・植物が繁茂していないか
建物の内部の状態・雨漏りやカビの発生が見られるか
・床や壁が腐っているか
・動物が侵入している形跡がないか
敷地の状態・雑草が繁茂し、適切に管理されていないか
・ゴミが放置されていないか
周辺環境への影響・悪臭や害虫の発生源となっていないか
・倒壊の危険性があり、周囲に危害を加える可能性がないか
使用状況・所有者の状況・過去に居住していた形跡がなく、今後も居住する予定がないか
・所有者の所在が不明であるか

これらのチェック項目に複数当てはまる場合、特定空き家と認定される可能性が高まります。前述の通り、最終的な判断は市区町村が行うため、ご自身の所有する空き家が該当するか不安な場合は、お住まいの地域の担当窓口に相談することをおすすめします。

4. 特定空き家に認定されるとどうなる?

4-1. 固定資産税が最大6倍に!

特定空き家に認定されると、固定資産税が大きく変わる可能性があります。

通常、土地の固定資産税は、住宅用地の場合、税負担を軽減するために更地の場合と比べて評価額が1/6に減額されています。

しかし、特定空き家に認定されると、この住宅用地に対する優遇措置が受けられなくなり、固定資産税が最大で6倍になってしまうのです。

区分住宅用地の特例特定空き家
固定資産税の計算市街化区域内の更地の評価額 × 1/6 × 税率市街化区域内の更地の評価額 × 税率

例えば、更地の評価額が3,000万円の場合、住宅用地であれば500万円として計算されますが、特定空き家になると3,000万円がそのまま評価額となり、固定資産税額は6倍に跳ね上がってしまいます。

固定資産税の大幅な増額は、所有者にとって大きな負担となることは間違いありません。

4-2. その他のペナルティ:勧告・命令・行政代執行

固定資産税の増税以外にも、特定空き家には所有者にとって厳しいペナルティが課される可能性があります。

状況が悪化するほど、行政による介入のレベルも強化されていきます。

段階内容
勧告特定空き家の改善を求める指導。
命令勧告に従わない場合、期限を定めて具体的な改善事項を命令。
行政代執行命令に従わない場合、行政が強制的に建物の解体や撤去を行い、その費用を所有者に請求。

行政代執行となれば、多額の費用を請求されるだけでなく、所有者の意向が反映されないまま建物が撤去されてしまう可能性もあるのです。

これらのペナルティを避けるためにも、特定空き家への指定を未然に防ぐ対策が重要になります。

5. 特定空き家にならないための対策

5-1. 空き家の活用方法

5-1-1. 売却する

空き家を売却すれば、特定空き家に関する問題を根本的に解決できます。売却によって得た資金は、新しい住居の購入や老後の生活資金に充てることができます。

売却のメリット売却のデメリット
特定空き家指定のリスクを解消できる売却活動に時間と手間がかかる場合がある
売却益を得ることができる希望通りの価格で売却できるとは限らない
空き家の維持管理費や固定資産税の負担がなくなる買主が見つからない場合は、更なる対策が必要になる場合がある

空き家の売却は、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。信頼できる不動産会社を選び、適切な価格設定や売却活動を進めてもらいましょう。

5-1-2. 賃貸に出す

空き家を有効活用する方法として、賃貸に出すという選択肢があります。家賃収入を得ながら、建物の老朽化防止にもつながるメリットがあります。

メリットデメリット
定期的な収入を得られる空き家ではなくなるため、売却しにくくなる場合がある
建物の使用に伴い、老朽化の抑制が期待できる入居者とのトラブル発生の可能性がある
管理を不動産会社に委託できる場合がある

賃貸に出す際には、以下の点に注意が必要です。

  • 必要な修繕やリフォームを行う
  • 不動産会社と契約し、入居者募集や管理を依頼する
  • 家賃や契約期間などの条件を設定する

賃貸に出すことで、空き家の維持管理費を賄いながら、収益を得られる可能性があります。ただし、入居者とのトラブルや、建物の修繕費用などが発生する可能性もあるため、事前にしっかりと検討する必要があります。

5-1-3. 親族が住む

空き家を所有している方が、その家に親族を住まわせるという方法もあります。 親族が住むことで、空き家ではなくなり、特定空き家への指定を回避できます。

メリットデメリット
固定資産税の軽減プライバシーの問題が発生する可能性がある
空き家対策として有効親族とのトラブル発生の可能性がある
建物の老朽化の抑制につながる親族に金銭的な負担をかける可能性がある
定期的な換気など、建物の維持管理がしやすくなる将来的に空き家になる可能性が残る

ただし、親族に住んでもらう場合でも、建物の状態によっては、修繕やリフォームが必要になる場合があります。 また、親族との間で、生活費や固定資産税などの費用負担について、事前にしっかりと話し合っておくことが重要です。

5-1-4. セカンドハウスとして活用する

空き家をセカンドハウスとして活用する方法があります。

週末や休暇に利用する別荘を持つ感覚で、空き家を有効活用できます。

メリットデメリット
空き家の劣化防止につながる定期的なメンテナンスや管理が必要になる
生活の拠点が増えることで、生活の幅が広がる光熱費や維持費などの費用が発生する
売却するよりも気軽に始められる防犯対策をしっかり行う必要がある

セカンドハウスとして活用する場合は、掃除やメンテナンスを定期的に行い、適切な管理を行うようにしましょう。また、防犯対策も重要です。

5-2. 解体という選択肢

特定空き家として認定される前に、思い切って解体してしまうという選択肢もあります。解体費用はかかりますが、更地にすることで固定資産税の軽減や、将来的に売却しやすくなるといったメリットがあります。

メリットデメリット
固定資産税の軽減解体費用がかかる
売却しやすくなる更地にした後の土地活用が必要
管理の手間がなくなる

解体費用は建物の構造や広さによって異なりますが、一般的な木造住宅の場合、100万円~200万円が相場です。解体後には、整地費用なども考慮する必要があります。

解体という選択肢は、将来的にその土地を活用する予定がない場合や、空き家の維持管理が難しい場合に有効です。

5-3. 空き家管理サービスの利用

空き家を所有しているものの、定期的に管理に戻ることが難しい場合は、専門業者に依頼する「空き家管理サービス」の利用も有効な手段です。サービス内容は業者によって異なりますが、主なものを表でまとめました。

サービス内容説明
定期巡回数週間~数ヶ月に一度、空き家を訪問し、通風・換気、郵便物の確認、敷地内の状況確認などを行います。
通報・緊急対応サービス異常を発見した場合や、近隣住民から連絡があった場合に、状況確認や初期対応を行います。
草刈り・清掃敷地内の雑草の除去や、室内の清掃を行います。
建物の簡易点検雨漏りやシロアリ被害などがないか、目視で確認を行います。
行政対応の代行市区町村から改善指導などがあった場合、所有者に代わって対応を行います。

これらのサービスを組み合わせることで、空き家の状態を良好に保ち、特定空き家 designation を回避できる可能性が高まります。サービスの利用料金は、空き家の規模や内容によって異なりますので、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

6. まとめ:早めの対策が肝心!

空き家を放置しておくと、「特定空き家」に認定され、固定資産税の増加などのペナルティを受ける可能性があります。

特定空き家になってしまうと、

項目内容
固定資産税最大6倍に増額
勧告・命令是正措置を取らない場合、勧告や命令の対象に
行政代執行最終的には、行政が強制的に建物を解体・撤去

といった事態になりかねません。

「今はまだ大丈夫だろう」と安易に考えて放置せず、早めに対策を検討することが重要です。空き家の売却や賃貸、リフォーム、解体など、状況に合わせて適切な方法を選びましょう。