空き家は戸建て住宅とアパート・マンションで発生要因や活用法が異なります。戸建て住宅の場合は高齢化や人口減少が主な原因で、地域の過疎化に伴って増加する傾向にあります。一方、アパート・マンションの空き家は所有者の転居や相続問題など、個人の事情が大きく影響しています。
これらの空き家を有効活用するため、自治体は所有者への働きかけや支援策を講じるとともに、地域コミュニティと連携して、創造的な活用方法を検討することが重要です。
1.戸建て住宅の空き家
(1)概要と特徴
- 戸建て住宅の空き家とは、主に以下の3種類に分類されます。
<表> 種類 |概要 賃貸用 |新築・中古を問わず、賃貸目的で空き家となっているもの
売却用 |新築・中古を問わず、売却目的で空き家となっているもの その他 |上記以外の人が住んでいない住宅(転勤・入院等で長期不在) </表>
総務省の統計によると、空き家全体に占める割合は以下の通りです。
- 賃貸用 50.9%
- 売却用 3.5%
- その他 41.1%
特に「その他」のカテゴリーが近年増加傾向にあり、管理不全により倒壊の危険性や景観の悪化などが懸念されています。
(2)起きる原因
戸建て住宅の空き家が発生する主な要因は、以下の3点です。
1.所有者の高齢化 2.相続による所有者不在 3.人口減少による需要低下
1.については、空き家の所有者の高齢化に伴い、建物の維持管理が困難になることが要因です。
2.については、相続が発生した際に、遺産相続人同士の協議がつかず、空き家の処分が進まないケースがあります。
3.については、地方では人口減少が進み、空き家の需要が低下していることが要因となっています。
このように、空き家発生の背景には様々な社会的要因が絡んでいます。
(3)活用法と事例
戸建て住宅の空き家を活用する方法としては、建物をそのまま賃貸住宅にする方法があります。空き家を賃貸住宅にすれば、固定資産税が住宅用地の特例対象となり軽減されるほか、家賃収入も得られます。
また福祉施設や太陽光発電設備の設置など、住宅以外の用途への転用も検討できます。
その他の活用法としては、 ・空き家バンク等を活用した売却 ・リフォームして民泊やシェアハウスとしての活用 ・物置や作業場としての利用 などがあります。
2.アパート・マンションの空き家
(1)概要と特徴
集合住宅である賃貸アパートやマンションの空き部屋は、戸建てと比べて管理が比較的容易です。しかし、所有者が住戸ごとに異なるため、共用部分の管理を適切に行うことが重要となります。共用部分の修繕費用の捻出や、入居者の確保など、オーナー間での調整が必要となるのが特徴です。また、地域によっては空室が増加傾向にあり、長期的な空室状態が続くことで、オーナーの負担が大きくなる問題も生じています。
(2)起きる原因
アパート・マンションの空き家の発生要因として、オーナー自身の高齢化や相続問題などが挙げられます。長期的な空室状態が続くと、共用部分の管理や修繕費用の捻出が難しくなります。
さらに、入居者の確保が難しい地域においては、空室が増加傾向にあります。こうした状況下では、オーナーの負担が大きくなり、放置された空き家が増加する可能性があります。
(3)活用法と事例
アパート・マンションの空き家については、オーナーが積極的に活用策を検討することが重要です。例えば、空室を活用して地域のシェアハウスや高齢者向け住宅として提供することで、地域課題の解決につなげることができます。また、空きテナントスペースを地域交流スペースとして活用するなど、コミュニティ施設としての活用も考えられます。さらに、オーナー自らが空き部屋を自治体や不動産会社、地域住民向けに情報公開し、賃貸や売却につなげていくことも効果的です。
3.その他の空き家
(1)別荘や仮住まいなどの概要
その他の空き家に分類される代表的なものとして「二次的住宅」があります。
二次的住宅とは、週末や休暇時に利用する別荘のほか、残業で遅くなった際の仮住まいなど、普段は人が住んでいない住宅を指します。
総務省の「平成30年住宅・土地統計調査特別集計」によると、二次的住宅は空き家全体の4.5%を占めています。
<二次的住宅の例>
・別荘(避暑地や温泉地など) ・仮住まい(残業で遅くなった際の宿泊先)
二次的住宅は、今後人が住む可能性があるものの、長期にわたり適切な管理が行われないと、老朽化して「特定空家等」に指定される恐れがあります。
(2)起きる原因
別荘や仮住まいなどの二次的住宅が空き家となる主な要因は以下の通りです。
・所有者の死亡 所有者が亡くなり、相続人が遠方に居住しているため、管理が行き届かなくなる。
・転勤による住み替え 転勤で遠方への引っ越しを余儀なくされ、元の二次的住宅を空き家のままにしておく。
・利用目的の喪失 リタイア後の移住先が決まらず、別荘を利用しなくなるなどの理由で空き家化する。
・経済的な理由 二重ローン負担が重く、別荘の維持管理費がかさむため空き家化する。
このように、二次的住宅では所有者の事情で空き家化しがちです。
(3)活用法と事例
二次的住宅の場合、別荘などは観光地で活用されることが多く、仮住まいの空き家は企業の社員寮やシェアハウス、学生の下宿などとして活用することができます。例えば、別荘地の空き家を地域のみなさんで管理し、観光客の宿泊施設として活用する取り組みが行われています。また、仮住まい用の空き家は、単身赴任者の一時的な住まいや、災害時の避難場所としても活用できます。このように、二次的住宅の空き家は、その特性を活かした利活用が期待されています。
4.空き家問題への取り組み
(1)所有者への指導
空家法の改正により、所有者の責務が強化されました。従来の「適切な管理の努力義務」に加え、「国や自治体の施策に協力する努力義務」が課されました。
具体的には、以下の指導が行われる可能性があります。
・管理不全空家と認定された場合、適切な管理を行うよう指導を受ける ・指導に従わない場合、勧告を受け、固定資産税などの軽減措置が受けられなくなる
空き家を放置すれば、近隣への迷惑や景観悪化、税負担増など様々なデメリットがあります。 所有者は、空き家の適切な管理や活用を行う必要があり、国や自治体の施策にも協力する義務が生じています。
(2)自治体の支援制度
空き家の増加は社会問題化しており、各自治体でも様々な支援制度が設けられています。主な支援内容としては、以下のようなものがあります。
- 空き家の解体費用への補助金
- リフォーム費用への補助金
- 空き家バンクへの登録支援
- 相談窓口の設置
例えば東京都では、最大50万円の解体補助金があります。また、神奈川県の相模原市では、最大30万円のリフォーム補助金があり、活用実績も多数あります。
このように自治体ごとに補助内容は異なりますが、空き家の適切な管理や活用に向けた取り組みが行われています。
(3)地域コミュニティとの連携
空き家の活用には、地域コミュニティとの連携が欠かせません。所有者や活用者だけでは限界があり、地域住民の理解と協力を得ることが重要です。 例えば、地元自治会と定期的に情報共有を行うことで、空き家の利活用状況を把握できます。また、近隣住民と活用者をマッチングし、お互いに協力し合える関係を構築することも有効です。
自治体は、こうした取り組みを下支えするため、以下のような施策を行っています。
・地域住民向けの空き家セミナーの開催 ・地域団体と連携した空き家バンク制度の運営 ・空き家所有者と利用者とのマッチング支援
など
空き家の利活用を地域全体で支えていくことが、コミュニティの活性化や安全・安心な街づくりにつながります。
おわりに
空き家の問題は、単に所有者や自治体だけでなく、地域全体で取り組むべき課題です。地域住民が空き家の利活用に積極的に関わり、お互いに協力し合うことで、地域コミュニティの活性化や安全・安心な街づくりにつながります。自治体が主導しつつ、地域の様々な主体が連携して課題解決に当たることが重要です。このような取り組みを通じて、空き家問題の解決と地域の活性化を両立していくことが求められます。