家を売ったら固定資産税はかかる? 注意点と節税対策を解説

1. 家を売却した年の固定資産税はどうなる?

(1) 固定資産税は1月1日時点の所有者に課税される

固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税されます。これは「賦課期日」という原則に基づいています。

項目内容
課税対象土地、家屋などの不動産
賦課期日毎年1月1日
納税義務者賦課期日時点の不動産所有者

つまり、1月2日以降に家を売却した場合でも、その年の固定資産税は売主が支払う義務があります。ただし、売却した日から年末までの日数分は、売主が負担する必要はありません。後述する通り、売買契約時に固定資産税の精算を行いますので、ご安心ください。

(2) 売却した年の固定資産税は日割り計算

家を売却した年の固定資産税は、1月1日から売却日までの所有日数に応じて日割り計算されます。1月2日以降に売却した場合、固定資産税の負担を軽減できる可能性があります。

例えば、固定資産税が年間12万円の物件を、4月30日に売却した場合、所有日数と日割り計算は以下のようになります。

期間所有日数
1月1日~1月末31日
2月1日~2月末28日
3月1日~3月末31日
4月1日~4月30日30日
合計120日
項目計算式金額
年間の固定資産税120,000円
日割り計算後の固定資産税120,000円 ÷ 365日 × 120日39,452円

上記のように、売主が負担する固定資産税は日割り計算の結果、約39,452円になります。

(3) 固定資産税の精算は売買契約時に行うのが一般的

家を売却する際には、固定資産税の精算が必要となります。一般的には、売買契約時に売主と買主の間で精算が行われます。

項目説明
精算日売買契約日
負担区分売主:1月1日から精算日までの日割り分
買主:精算日の翌日から12月31日までの日割り分

例えば、売買契約日が7月1日の場合、1月1日から6月30日までの固定資産税は売主が負担し、7月1日から12月31日までの固定資産税は買主が負担することになります。

固定資産税の精算方法は、売買契約書に明記されます。未払いの固定資産税がある場合は、売却代金から精算されることもあります。

(4) 買い主が固定資産税を負担する場合もある

一般的には売主負担となることが多い固定資産税ですが、場合によっては売買契約の内容によって、買い主がその一部または全部を負担するケースも存在します。

負担売主買い主
一般的なケース1月1日~売買契約日まで売買契約日~12月31日まで
買い主負担の場合1月1日~引渡し日まで引渡し日~12月31日まで

上記表のように、例えば引き渡し日を基準として、それ以前の固定資産税は売主、それ以降は買い主が負担する、といった契約を結ぶことがあります。このようなケースでは、売買契約書に固定資産税の負担区分が明記されるため、内容をよく確認することが重要です。

2. 固定資産税の精算方法

(1) 日割り計算の方法

家を売却した年の固定資産税は、1月1日から売却日までの所有日数に応じて日割り計算されます。

具体的には、以下の計算式で算出されます。

項目内容
年間の固定資産税額固定資産税の納付書に記載されている金額
所有日数1月1日から売却日までの日数
基準日数その年の日数(うるう年の場合は366日)

年間の固定資産税額 × 所有日数 ÷ 基準日数 = 日割り計算後の固定資産税額

例えば、年間の固定資産税額が10万円、売却日が5月31日だった場合、所有日数は151日となるため、以下のようになります。

100,000円 × 151日 ÷ 365日 = 41,369円

これが、売主が負担すべき固定資産税額となります。

(2) 固定資産税の納付書で確認

毎年度送られてくる固定資産税の納付書には、その年の課税額が記載されています。
具体的な内訳を確認することで、日割り計算に必要な情報を得ることができます。

項目内容
課税物件課税対象となる家屋や土地の種別
所在地課税対象となる不動産の所在地
固定資産税評価額固定資産税の算出根拠となる評価額
課税標準額固定資産税評価額から控除などを差し引いた金額
税額算出された固定資産税額
納期限固定資産税の支払い期限

納付書は大切に保管し、売却時に手元に用意しておきましょう。

(3) 不動産会社に相談

固定資産税の精算について、不明点がある場合は、不動産会社に相談することをおすすめします。

不動産会社は、固定資産税の計算や精算に精通しているため、売主と買主の間に入って、スムーズな取引をサポートしてくれます。

具体的には、以下のようなサポートが期待できます。

サポート内容説明
固定資産税の試算売却予定の物件の固定資産税を事前に試算してもらうことができます。
精算方法の提案売主と買主の状況に合わせて、最適な精算方法を提案してもらうことができます。
必要書類の準備固定資産税の精算に必要な書類を、不動産会社が準備してくれる場合があります。
税務署や市区町村役場への対応固定資産税に関する手続きで、税務署や市区町村役場へ行く必要がある場合、不動産会社が代理で対応してくれる場合があります。

固定資産税の精算は、金額が大きくなる場合もあるため、不安な点があれば、早めに不動産会社に相談しましょう。

3. 家を売却する際に注意すべき固定資産税のポイント

(1) 固定資産税評価額と売却価格の差額

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されますが、その税額を算出する際に基準となるのが「固定資産税評価額」です。

固定資産税評価額売却価格
固定資産税を算出する際の基準価格不動産を実際に売却した価格

この固定資産税評価額は、実際の市場価格(売却価格)とは異なる場合があり、一般的には市場価格よりも低い傾向にあります。

そのため、売却価格が固定資産税評価額を上回るケースも少なくありません。ただし、この差額に対して課税されることはありません。

(2) 固定資産税の滞納

固定資産税を滞納していると、売却時にトラブルになる可能性があります。滞納分は売却代金から差し引かれるため、売主は手取り額が減ってしまうだけでなく、買い主との間でトラブルに発展することもあります。また、滞納が長期化すると、最悪の場合、不動産が差押えとなる可能性もあるため注意が必要です。

固定資産税滞納によるリスク
売却代金からの差し引き
買い主とのトラブル
不動産の差押え

売却を検討している場合は、事前に固定資産税の納付状況を確認し、滞納があれば速やかに納付しておきましょう。

(3) 売却益が出た場合の税金

家を売却して利益が出た場合は、譲渡所得として所得税と住民税の対象になります。この譲渡所得は、「譲渡収入金額」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて計算します。

項目説明
譲渡収入金額家を売却して得た収入
取得費家を取得するためにかかった費用(購入費、手数料など)
譲渡費用家を売却するためにかかった費用(仲介手数料、印紙税など)

譲渡所得には、所有期間が5年超の長期譲渡所得と5年以下の短期譲渡所得があり、税率が異なります。
売却益が出た場合は、確定申告が必要になるケースがありますので、事前に税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

4. 固定資産税の節税対策

(1) 売却時期を調整する

固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、売却時期を調整することで、負担を軽減できる可能性があります。

売却時期固定資産税の負担
1月2日以降その年の固定資産税は売主負担
12月31日以前その年の固定資産税は買主負担

上記表の通り、売却を12月31日以前にすることで、その年の固定資産税は買主が負担することになります。
ただし、売却時期の調整はあくまでも節税対策の一つであり、市場の動向や売却価格などを総合的に判断することが重要です。

(2) 特定の控除制度を利用する

家を売却した際に適用できる控除制度には、以下のようなものがあります。

控除制度概要
3,000万円の特別控除居住用財産の譲渡所得に対して、譲渡益が3,000万円まで控除される制度。
居住用財産の買換え特例一定の条件を満たす場合に、買換えによって得た利益に対して税金の繰り延べが受けられる制度。

これらの控除制度を適用するためには、それぞれ要件があります。
ご自身の状況に合わせて、どの控除制度が利用できるのか、事前に確認しておきましょう。

(3) 専門家への相談

固定資産税に関する疑問や不安を解消するため、専門家へ相談することも有効です。相談できる専門家には、以下のような専門家が挙げられます。

専門家説明
税理士税務に関する専門家であり、固定資産税の計算や節税対策について具体的なアドバイスを受けられます。
不動産鑑定士不動産の専門家として、固定資産税評価額の妥当性を判断したり、評価額の見直しを請求する際にサポートを受けられます。

これらの専門家に相談することで、より有利な条件で不動産売却を進められる可能性があります。

5. まとめ: 不動産売却をスムーズに進めるために

不動産売却における固定資産税の取り扱いは、売却時期や売買契約の内容によって変わる可能性があります。

スムーズな不動産売却を実現するために、以下のポイントを事前に確認しておきましょう。

確認事項詳細
固定資産税の納付状況滞納がないか確認し、売却前に対処しておきましょう。
売買契約書への記載内容固定資産税の精算方法や負担区分について、売主・買主間で合意した内容が明確に記載されているか確認しましょう。
専門家への相談不安な点や疑問点は、不動産会社や税理士などの専門家に相談し、納得のいく取引を進めましょう。

固定資産税についてしっかりと理解しておくことは、売主にとっても買主にとっても、トラブルを避けるために重要です。